「思っていたのと違う」「意外だった」というのは、良い意味の時もあるし、悪い意味の時もある。
ツンっとした女性がお年寄りに手を差し伸べた時とか、ハッとしたりする。

「烏(からす)に単(ひとえ)は似合わない」はそんな小説だった。
うっひゃーって思うほどの意外性がある。

冒険活劇じゃないの?

八咫烏(やたがらす)シリーズはすでに5作が発表されています。
最近小説を読むようになって、中でもファンタジーがいいなぁと思っていたところ、このシリーズが気になりました。

事前の情報では、冒険活劇をイメージしていた。
八咫烏の一族は特殊能力を持っていて、空を飛んで戦う、ガッチャマン的な。
敵の城に潜入してお姫様を救い出すようなストーリー。
そういうシリーズなのだと思っていたのです。

でも、全然違った、意外だった。

4人の姫たちの話

シリーズ1作目にあたる「烏に単は似合わない」を読んでみました。
松本清張賞最年少受賞とのことで、よく売れているようです。

冒険活劇だと思っていたのに、源氏物語みたいな雰囲気。
4人の姫がいて、次の君主たる若宮の正妻の座を争うストーリー。
キラキラ女子合戦が繰り広げらるわけです。

登場人物の名前がややこしいので、くじけそうになりました。
この世界の家系の名前、部屋の名前、人の名前が入り乱れて記載されるので、慣れないうちはしんどいです。

「真赭の薄」←これ読めます?これが人名なのです(正確にはあだ名)。
最初に出てきたときにはフリガナがふってあるから読めるのですが、次に出てきたときにはすでに読み方を忘れている。
おそらく7回くらいはページを戻ったな。
「ますほのすすき」と読みます。

王朝絵巻はややこしいなぁと思いました。

少女マンガ的展開か?

物語の序盤は東家の二の姫(あせび)の視点で描かれます。
この姫が真赭の薄たちとの女のバトルを繰り広げるわけですが、世間知らず・田舎者だと馬鹿にされます。
さらには家同士の権力争いの様相も見えてくるのです。

純粋に若宮を想うあせびの運命やいかに?っていう展開。
自己主張がなく周りの人に助けられてばかりのあせび、こういう受け身な子の想いが通じそうな物語は実に少女漫画的だなぁと思うわけです。
自分の好みを言うと、意志のはっきりした別の姫の方が良いなぁと思ったりしました。
でも、少女漫画ならしゃあねぇなぁと。

そう思っていたら、陰謀が渦巻いていき、死人が出てきます。
あせびはどうなってしまうのでしょう?

意外な展開

後半はかなり意外な展開になってきます。
死人が出ちゃいましたので、サスペンス調です。
『のほほんファンタジー小説が良かったのにー』って思ったのですが、ページをめくる手が止まらない。

ストーリー展開に意外性があるし、登場人物にも意外性がある。
いい男として描かれるべき若宮でさえ意外だった。
怖いーって思う展開もあります。

ファンタジー小説のはずなのに、松本清張賞って変だなぁと思っていたのですが、最後まで読むと納得。
読み返したくなるようなすごく面白い作品でした。

空想癖の女の子

作品の最後に東えりか氏による解説があります。

著者の阿部智里氏は4歳くらいの頃、「虹を食べた」とか、「突然降りだした雨に困って、大きなキノコに雨宿りした」「妖精をみつけた」「風の神様を木の上に見つけた」などと母に語っていたそうだ。
母は想像力豊かだと将来を楽しみにしていたらしい。

人には生まれ持った才能があって、それを活かして生きるべきだよなぁと思いました。

余裕のない親だったら「しょうもないこと言ってんと、やることやりなさい」って言われそうやもんね。

能力を生かす方向に世の中が進むように願っております。

まとめ

人には意外性があるものだ。
望まれる通りに生きるなんて、全然面白くない。
想いや才能を活かして生きるべきだ。

そんな風に強く生きれるかどうか・・・。

『強く生きたいなぁ。』
『続きも読んでみようかなぁ。』
そういう感想です。

とても面白く読めました、おすすめできる作品です。

続編の感想はこちら>>立場は似ているが想いは色々。「烏は主を選ばない(by阿部智里)」

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投稿者: 石黒わらじろう

京都の古い民家で暮らしている。 趣味はランニングとブログと盆踊りを含むフォークダンス。 別名義で書いた小説は映画の原作として採用された。 自分で建てた小屋にて暮らしていたことがある強靭な狂人。 地球にも自分にも健康な生活がしたい。

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