今日は「メガネと放蕩娘」について書きます。
私にとって、この本は劇薬でした。胸がギュンって痛くなる。
これは商店街の活性化をテーマにした小説なのです、主人公は女性、しかもメガネをかけた地方公務員、ですけれど、私と境遇が似ているのです。商店街に実家があるという点。
この主人公は「なんで商店街は寂れてしまったのだろうか?あんなに輝いていたのに。」というところからスタートして、破天荒な妹、こっちが放蕩娘ですね、が妊娠して実家に帰ってくるところから物語が面白くなってきます。
「商店街をなんとかしたいな。」って動き出すのですが、なにかと上手くいかないのです。この上手くいかない様子が商店街あるあるでリアリティがめちゃめちゃあって、私の心はギュンって痛くなるのです。
例えばシャッターを締めたままテナントにも出さない問題とか、よそ者に冷たい問題とか、イベントに非協力的な様とか、新規出店者が商店街を選ばない理由とか、リアルすぎる。心が痛い。
うちの実家もなかなか商売を上手くできていないし、最近は閉まっていることが多い。そういう現実に対して自分が何かできるかというと、色々と阻むものがあって、やろうと思わない。ただ心が痛むばかり。
とにかく、商店街問題のリアリティがありすぎて、私にとっては劇薬なのでした。
小説として人にオススメできるかというと、それほど面白くはないかもしれないです。なぜなら教科書的だからです。商店街と全く関係のない人に紹介するかというと、挙がらないなぁ。
著者は山内マリコ氏で私と同世代です。この方は地方都市に住む女の子のリアルを描くのが上手いとされている作家さんです。「ここは退屈迎えに来て」という作品を読んだのですけど、私にとっては面白くもなんともないのです。しかし、地方都市に住む女性のリアルに興味がある人がいて、そういう人にはニーズがあるんだろうなぁ。映画化されている作品が多数ありますので、何かしら時代が求める作家さんなんだろうなぁ。なんでもない普通の描写がとても上手なんだろうなぁ。
ですから、商店街の問題をリアルに捉えて、それを読みやすい小説にするという点で作家としての能力に優れていると思います。
商店街の内部に入ってる者の心をグサッとやられたわけですから、とても能力があるのです。
残念ながらクライマックスも現実的ですから、夢を見れる話ではないのですよね。この本を読めば街の活性化をやりたくなるという本ではない。
というわけで、商店街関係者や、商店街と関わりながらまちづくりを考える方には読んでみると面白いかもしれません。商店街の問題点やどうしたらどうなるかのケーススタディになるかもしれません。
私にとってはかなりの劇薬でしたので、刺激になりました。
何かしら、頑張りたいです。
(30分、1148字)
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