今日は「カンパニー」という小説について書きます。

あなたは「自分が世の中に必要とされていない存在だ」と思ったことはありますか?

私は、、、私は、、、よくあるし、今も自分の存在意義をさほど感じていないなぁ。

この「カンパニー」という小説はバレエの舞台を中心にした企業小説です。ダンスのシーンが多くて、ダンス好きの私にピッタリの作品。

最初から私にピッタリの描写が出てくる。主人公は47歳のオジサンなのですけれど、突然妻が家から出ていくのです。そして、離婚しようという話を切り出される。さらには会社でリストラ対象者の部署に配属される。この設定は、心境が理解できすぎて、ビリビリきました。

もうひとり女性の主人公が出てきます。20代だったはず。この人もリストラ対象者になってしまって、私って必要とされているのだろうか?と悩みます。

さらには、男性の世界的に有名なバレエダンサーが影の主役として出てきます。30代だったかな。体の調子が悪くなって、いつまで踊れるんだろうか?踊れなくなった自分は必要とされるのだろうか?と悩みます。

こういう登場人物たちの悩みにとても共感を持ちながら、物語を読み進めました。

で、すごく面白かったです。

主役級の登場人物が多くて、その人達の思惑といざこざで、てんやわんやの大騒ぎ。意図と意図がぶつかってストーリーが進みます。ものすごい悪人は出てきません。それぞれの思惑や利害が一致しないだけ。説得によるバトル。面白いです。

47歳のオジサンと、20代の女性の視点で語られますが、この2人以外は華やかな世界にいる人達で、普通の人の視点でダンス世界を見れるので、いい感じにリアリティをもって別世界に連れて行ってくれる作品。

例えば、47歳のオジサンが若い女性のバレエダンサーに囲まれて、ワッキャワッキャとなるシーンがあるのでけれど、いい香りがした。

あと、フラッシュモブの描写はたまらなく気持ちよかったです。私はダンスが好きなのです。

この著者は伊吹有喜さんです。「四十九日のレシピ」が面白かったので著者を追ってみました。まだまだ追おうと思いました。四十九日のレシピの感想文は順序が逆になってしまいますが、後日書こうと思います。

この伊吹有喜さんは普通の人が持ってる悩みやコンプレックスで物語を走らせれる人で、今まさに憧れの作家さんになっている。恋愛も殺人も暴力もファンタジーもないのに読み進められるストーリー展開がすごくすごい。←日本語下手かよ!

ちょっと違和感を感じた点は、一人称と三人称が揺れ動いているようなのが「ん?そういう技法なのか?」と。
こう思ったのだが、石黒はPC画面に向かったままだ。
みたいに、何人称?って思った。

気になる点はあるが、多様な人物を登場させて、ごちゃごちゃと大混乱させて、それを上手く収束させる。いいです。「うわぁ、どうなるんだ、この混乱」って思うし、自分が作者だと思うと「手に負えねぇ」って思いますね。面白いです。

さて、結局のところ、この本を読んだからといって、自分の存在価値を認められるようにはならない。でも登場人物のように、周りにいる誰かのために一生懸命に動いた末には誰かのかけがえのない存在にはなれるかな?という気はしました。生き甲斐みたいなのは見つかるのかな?と。

というわけで、オススメの作品です。

踊るのが好きな人、および40代に差し掛かった男性には特にオススメですね。

20代の女性が読むと別の視点で楽しめるのかもしれないので、そういう人の感想を聞いてみたいな。

以上です。

(38分、1445字)

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投稿者: 石黒わらじろう

京都の古い民家で暮らしている。 趣味はランニングとブログと盆踊りを含むフォークダンス。 別名義で書いた小説は映画の原作として採用された。 自分で建てた小屋にて暮らしていたことがある強靭な狂人。 地球にも自分にも健康な生活がしたい。

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