今日は読んだ本の話。
朝井リョウさんの「桐島、部活やめるってよ」を読了しました。

このタイトルがめっちゃ有名になりましたよね。
「桐島、部活やめるってよ」
私もブログのタイトルをつける時に「〇〇、〇〇やめるってよ」というのを付けてしまったことが2回あったし、こういう調子でツイートしたこともあっただろう。

そんな有名作だから、映画版をネットで見たことがある。
高橋愛さんの女子高生姿は「この人は自分の初恋の相手なのではないか?」と思わせる何かがあるし、松岡茉優さんが走るシーンが印象に残っている。
しかし、根底にあるテーマとかはよく分からんくて、面白かったとはいい難い。

そして時間が経ち、最近になって原作版が連作短編だと知って「え? 嘘!」って思ったので興味がわきました。
映画版からは想像がつかない。どんな構成なのか気になる。

手にとってみました。

このお話は秋から冬が来る頃の話なので、これからの季節にちょうど良い。
日差しは柔らかいけれども、なんとなく不安が漂うシーズンにピッタリ。

高校生の青春を描いた作品で、5人の主人公が登場し、5編の小説となっている(文庫版だと6人かな?)。
バレー部だったり、ブラスバンド部だったり、映画部、ソフトボール部、一応野球部、それぞれの悩みと頑張りどころがある。恋もある。

一人称で語られ、葛藤、他者への憧れや侮蔑でストーリーが展開され、大きな事件は起こりません。
高校生モノに多そうな、いじめや売春や強姦などは文中に描かれていません。

事件は起こらないけれど、面白く読めました。
「君の人生に何があって、どう思ったん?」
という視点です。
主人公の心の声を文章にする。これぞ小説らしさかなぁと思う。
漫画や映画にないものだ。
映画版とはずいぶん印象が違いました。

あと、桐島が主人公として登場せず、その後どうなったか分からないところにも面白さがあります。

また、竜汰という友達が序盤に「彼女とセックスしたい」などと言うのですが、原作版ではその彼女が明記されていない。
これはじっくりと本文を読めばヒントが隠されていたのかもしれない。

分かりやすい文章で、回想シーンが文中に自然に放り込まれるの上手いです。

私には苦手だったのは、登場人物の相関関係を把握するのが難しかったです。
誰と誰が付き合っていて、誰と誰が面識ないのか分からない。梨沙と沙奈はあまりキャラ立ちしていないので、どっちがどっちか分からなくなる。
しかし、こういう人間の複雑さが面白みになっているのかもしれない。自然なミステリーと捉えることもできる。

全体として分かりやすいスッキリしたエンディングを迎えていないので、もやもや感は残っていて、隠された話やアナザーストーリーを掘り起こしたくなる。

なぜこのタイトルが有名になったのかはよく分からん。
「桐島、部活やめるってよ」
こういうフレーズを聞くと、何らかの理由やストーリーを探してしまうのだろうか?
人間ってのは不思議ですね。

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投稿者: 石黒わらじろう

京都の古い民家で暮らしている。 趣味はランニングとブログと盆踊りを含むフォークダンス。 別名義で書いた小説は映画の原作として採用された。 自分で建てた小屋にて暮らしていたことがある強靭な狂人。 地球にも自分にも健康な生活がしたい。

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