我が人生で最も肉を食べている。
食えども食えども肉がある。
なぜなら狩猟者になったからだ。
自分で獲得した肉は、ちょっと固くて、味わいがあって、美味しくて、おぞましい。
命をいただく毎日。

本当は守るためにわな猟免許とったのだ。
庭のニワトリをイタチから守るために正しく罠を設置したかったのだ。
しかし、ひょんなことから花背に赴き、師匠に出会い、狩猟を教えてもらえる事になった。
罠猟は銃猟ほど攻撃的でないにしろ、積極的に獲物を取るために罠を仕掛ける。餌でおびき寄せ、掛かるのを待つ。
掛かった獲物をどうやって仕留めるのか?
なかなか、むごたらしい。

猟師というのは、近くて遠い存在だ。
赤ずきんちゃんを筆頭として昔話に出てくるので、幼い頃から馴染みがある。
だが実際の猟師に出会うことはあまりないだろう。
そもそも最近では職業として成立させるのが難しい。
狩猟を始めたと言ったら、周りの人から熱心に話を聞かれるようになった。
みんな知ってはいるけど、具体的にはよく分からなくて、小さな憧れがあるのかもしれない。
山に出かけて肉を取ってくる存在に。

猟師といえば、銃猟のことをイメージすると思う。
♪せんばやまにはタヌキがおってさ、それを猟師が鉄砲で撃ってさ……
だが拙者は罠猟なので猟師っぽくはない。
どっちかというと工作員。
スコップだのワイヤーだのバネだのを持って、さらには米ぬかを持ってえっちらおっちら山を移動する。
罠猟は毎日罠を見回るのがルールなので、あまり山深いところまでは行かない。毎日探索できる範囲に留めておく。
やはり、猟師っぽくはない。

拙者の師匠は20年の経験を持つ人で、11月15日の猟期が始まって以降、同行させもらって、色々な経験をさせてもらった。
罠猟は7段階ある。
罠を作る。罠を設置・仕掛ける。餌を撒いて罠に誘引する。罠を見回る。罠に掛かったら仕留める。獲物を解体する。料理する。
人によっては好き・得意なパートと、嫌い・めんどくさいパートがあることだろう。重労働なところも多い。
拙者は料理するのが一番好きだ。
それ以外のパートでは、掛からないで欲しいな、かわいそうだなと思っている。
やはり、命を奪う行為はむごたらしい。

とはいえ、自分が食べる肉はどんな風に自分の食卓にやってきたのか知っているだろうか?
その鶏はどうやって育った? その豚はどんな餌を食べた? その牛はどうやって屠殺された?
家畜もどこかでむごたらしいことが行われていて、そういうことは大っぴらにされていない。
きれいに隠匿され、みんな無邪気に肉を食う。
なんなら、部位の名前が書かれた木札と一緒に盛られた肉の画像を投稿する。

狩猟を始める前は、拙者も無邪気に鹿が捕れたとか猪が捕れたとか、ブログに書くつもりでいたのだが、自慢げに語る行為ではないなと、今は思っている。

けれど、野生の肉はどんどん食べた方が良い。
狩猟をする前は、鹿とか猪とかわざわざ獲ってまで食べる必要はないよな、と思っていたのだが、今では家畜の肉を食べるよりマシだと思う。
家畜はおおむね外国産飼料で育っているし、限られたスペースで飼われるし、抗生物質やワクチンの懸念もある。
もっとも家畜の現状や屠殺の現場を拙者はよく知らない。
よく知らないものを食べるのはセンスが悪い。
一方で、野生の鹿は増えすぎているし、植物を食べすぎて山が荒れる。
自分が手を下した生物ならば、どこで生きていたか明白で、自然のものを食べただろうから安全だ。オーガニック。
これからは野生の肉と自分で育てたニワトリとその卵を食べて生きていきたいものだ。

今はまだ、肉の各部位と最適な調理法が分かっていないので研究中だけど、美味しいのができたら、みんなにも食べてもらおうと思う。
ジビエパーティーしよう。
掛かった獲物をどうやって仕留めるかも、その時にお伝えしよう。

以上。

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投稿者: 石黒わらじろう

京都の古い民家で暮らしている。 趣味はランニングとブログと盆踊りを含むフォークダンス。 別名義で書いた小説は映画の原作として採用された。 自分で建てた小屋にて暮らしていたことがある強靭な狂人。 地球にも自分にも健康な生活がしたい。

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