選挙中やからかもしれんけど、最近批判が飛び交っている。
批判はもうお腹いっぱいだ。
そんな中でちょうど良い本を読んだ。
「何者」っての。
若輩者ですが、感想を記します。
日常の小説
私はこれまで小説を読まなかったので、その味わい方とか好みのジャンルとかをよくわかっていない。
今回は、人が死ななくて、ファンタジーでもなく、日常を描いたような作品を読もうと思った。
思いついたのがこの“何者”という朝井リョウ氏の作品です。
今年映画化されたので、流行に遅れまくっているが、まぁ気にしないでおこう。
こういうベストセラーは古本が手に入れやすいし、ハズレもなくて良い。
朝井リョウ氏といえば、“桐島、部活やめるってよ”の方が有名なのかな。
タイトルだけで有名ですよね。
何者
“何者”は就職活動を描いた作品です。
就職というゴールに向かって進む男女の人間関係、ホンネとキラキラ粉飾の話。
事件的なことは何も起こらなくて、それでも物語として成立するのはどういうわけでしょうか。
友情や恋愛関係があって、ちょっとギクシャクしたり、何となく暗雲が漂っていたりするのです。
仲良くしていた劇団の仲間と対立したり、親友とその彼女がなぜ別れたのか分からなかったり、マウントの取り合いをしてたり。
そのあたりが読者視点では謎として残っていて、時系列を入れ替えることによって、謎が解けていく感覚になります。
例えば、
親友と好きな子が付き合ってることが分かる
↓
その二人に距離があることが分かる
↓
実は別れていた
↓
別れた理由が分かる
↓
そして主人公といい感じになるんじゃないの、どうなんどうなん?
って話が展開していく。
何も起こらないのに、続きが気になる、だから面白く読めます。
テーマ性
日常を描いた作品ですが、テーマ性が強くて印象に残る。
その1、SNS上の言葉と実際の乖離。キラキラ装飾。
ネット上で自分は特別な存在であるかのように振る舞う、しかし実は苦戦しているそのギャップ。
その2、他者批判して安心すること。ディスる。
他者の低評価を見て安心する、自分は挑戦していないのに挑戦している人を批判する。
そんなインターネット上でよく見られる現象が、狭い人間関係の中の問題として出てくる。
示唆に富んだ作品になっています。
ネット上では批判する人がもてはやされる現象が起こるんですよね。
批判というか、揚げ足取りレベル。
他人をアホ・バカ・ブサイクとか言う人がタイムラインに流れてきたりする。
炎上マーケティングは、そろそろ時代遅れになって欲しいなぁと思います。
世界が汚れる。
批判ばかりで挑戦しないのは実にカッコ悪いというメッセージを強く受け取りました。
批判者ではなく挑戦者であろうと思います。
何者でもない自分
何者かになりたい自分。
何者にもなれない自分。
個人的な体験としては、私が父親になった時には何者かになれた気がして、とても安心感を得た。
突如それがなくなってしまったので、それ以来、再びジタバタしないといけなくなった。
真摯にブログを書くようになったのも、そういう理由があると思う。
そんな自分もまた変容して、別の何かをまた探しつつある。
かっこ悪い姿をさらしても、できることをやっていく、そして社会とつながっていく。
他人と関わり合いを持たないと、何者かにはなれないんだよなぁ。
だから頑張らないとダメなんだよなぁ、めんどくさいなぁ。
悲しいけど、それが人間。
まとめ
いい小説でした。
日常を描いているのに面白かったし、テーマもずしりときました。
「最近わかったんだ。人生が線路のようなものだとしたら、自分と全く同じ高さで、同じ角度で、その線路を見つめてくれる人はもういないんだって」
そうだなぁ、人生は孤独だなぁ。
誰も自分のことを分かってくれないのが当たり前で、だからこそ人と関わっていくんだなぁ。
なるほど、なるほど。