登山靴は高い。しかも使用頻度が少ない。
安いものもあるかもしれないが、安物買いの銭失いという言葉もある通り、山中で足が痛くなったら最悪だ。
だから拙者は登山靴を買えない。

とはいえ、これまで比良山にはよく登っていた。
滋賀県西部にある比良山系は駅から気軽にアクセスできる上に、琵琶湖が見下ろせて最高なのである。
そんな1000m級の山にどんなシューズで登っていたかというと、トレランシューズ。
登山靴に比べてトレランシューズは安いし、身軽さを求める拙者にはちょうど良い。
水に浸かったり(渡渉)できないのが難点ではあるが、そんな道を選ばなければ良いのである。
ただし、買い替えの時期にきていた。

最近、トレランはかなり流行っている。ランニングサークルで話を聞くと、みんなトレランも好んでいる。ゆえにシューズのラインナップも豊富になっている。
新しいものを買おうか、以前のものがmontrail、次はasicsで良いかな、と思っていた。
しかし、気が進まない。
地下足袋で良いのではないか?

拙者は去年から地下足袋型のランニングシューズを履いており、最初は足にダメージを受けて、「不良品や、もうやめや」と思っていたが、それは走り方やフォームに問題があると知って、徐々に修正した結果、ダメージが軽減されてきた。
前よりも強くなったのだ。
それゆえ、登山においても同様の思考が働く。
ただし足袋型のランニングシューズでは底が薄すぎるし、シューズ自体にダメージを受けると思い、なにかトレランに向く地下足袋はないのかと調べた。
すると、ほどほどに底の厚い地下足袋が存在している。

地下足袋にも色々あって、底の厚さが違う。
コスチューム用のペラペラのやつから、エアーが入っているものまである。
素足感もありつつ、そこそこクッション性もある地下足袋。トレランに向くのはまさにそういうもの。

地下足袋は登山靴より、トレランシューズよりさらに安い。

こうして拙者にとって地下足袋はトレイルの定番になり、比叡山まで行ったり、将軍塚までみんなで走ったりしたのである。
ちなみにではあるが、路面によっては足がめちゃめちゃ痛い。石がゴロゴロしている山道はそこら中にある。足つぼマッサージだと思って耐えるしかない。外傷にまでは至らないし、途中で穴が開くとか底が剥がれるとかはないので信頼できる。
そしてついに、比良山に挑む日がきた。

これは2023年11月11日の話で、山の師匠の登山会が招集され、ハーフマラソンも控えているのでトレーニングにちょうど良いなと参加した。
女性も含む10人くらいのチームで登るのでペースは普通くらい。
なので、地下足袋登山には最適だ。
とはいえ、山の師匠に「山を舐めるな」と怒られやしないかと心配しつつ家を出た。

朝が早すぎたので、バイクで登山口まで向かう作戦。別件があってお酒が飲めないのでちょうど良い。
登山口でメンバーに会うと、やはり「なんで地下足袋なん?」と言われたが、拙者は「山を傷つけないため」とやや上級者ぶった回答をすると、「カッコいい」と好評であった。
山の師匠も「マタギは地下足袋や」と、驚きの高評価で、拙者も『ありなんやぁ』と安心したところである。
確かに地下足袋だと、鹿にめちゃめちゃ近づけたりするんだよな、奈良でもないのに。

さて、地下足袋で登山してみた使用感だが、上りはめちゃめちゃ具合が良い。軽快であるし地面と足が密着して安心感を感じるほどである。イン谷口から金糞峠のルートであったが、すごく足袋に向いていた。
一方の下りの方はというと、雑な足取りになれないでやや苦戦。接地を気をつけないといけない。尖った石などの上に着地すると痛いのである。ゆえにスピードは出せないし地面を見るので姿勢も悪くなる。でも下山の際はそのくらいの慎重さが必要かもしれん。

結論としては、拙者の登山スタイルでは登山靴が必要なく、地下足袋で丁度よいと判明した。
マタギが地下足袋なのは認識してなかったが、山伏は地下足袋なので登山には向いているのである。
なので、みなさまも地下足袋登山にチャレンジしてみてはいかが?
ちなみに普段からの修練が必要なので、いきなりはやめておこう。

お金が無いから登山靴を買わないのではないのだよ、山を傷つけないためさ。

以上。

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投稿者: 石黒わらじろう

京都の古い民家で暮らしている。 趣味はランニングとブログと盆踊りを含むフォークダンス。 別名義で書いた小説は映画の原作として採用された。 自分で建てた小屋にて暮らしていたことがある強靭な狂人。 地球にも自分にも健康な生活がしたい。

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