今日は小説の「風待ちの人」について書きます。

最近は伊吹有喜さんの作品を追っています。これは四十九日のレシピがとても面白かったからです。

この度、ようやく伊吹有喜さんのデビュー作である「風待ちの人」を読むことができました。

年齢的にはピッタリきて、年代的にはちょっとズレてる。主人公たちが聞く音楽がちょっと前の世代。

主人公は二人いますが、ともに39歳なので同年代。当然ながら紆余曲折ある。そして男性の方は憔悴している。海にふらふらと入って溺れかけてしまうくらいに。

そんな男性が海沿いの町に来て、とある女性によって回復していく話です。
私も憔悴しておりますので、優しい人がそばに居てくれたらなぁ。はぁ。

伊吹有喜さんの作品は殺人は起こらないし、ファンタジーでもなく、普通の人が普通に持っているコンプレックスや悩みで物語が展開していきます。また会話が多いのも特徴かと思う。ですので読みやすいです。

この作品はオペラの椿姫が物語のメタファーになっているところがあって、音楽が豊かです。文化的でとても良いと思いました。そ
私もディズニーシーキャストの時代に、椿姫の乾杯の歌を歌う同僚がいて、それを思い出しましたね。

物語の前半は海辺の街を舞台にゆったりと進みます。後半は激しくなる。

さてと、ネタバレなしで感想を書くのは難しい。

まずは、誰もが痛みを抱えているよなぁと思えるのが伊吹有喜さんの作品の特徴です。何か悪いことをしたわけではなく精一杯生きているのに、ダメージを受けるんですよね。
そういう人達が回復していくことに、心が癒やされます。

男性視点と女性視点で語られる構成は以前読んだ作品と同じです。女性が読むとどういう感想になるのかが気になります。

素敵な家が登場する。女性の憧れが詰まった家だという。岬にあって、潮騒の音が聞こえるらしい。こいういう場所に連れて行ってくれるのが小説の力ですよね。読んでいる時間だけは海辺の町に住んだ気になった。
こういう行ってみたいと思わせる場所を登場させなきゃなりませんね、小説は。

四十九日のレシピの方が面白かったのですが、デビュー作の時点でここまで書けるのはやっぱり能力なのでしょうか。羨ましいです。

この「風待ちの人」というタイトルですけども、元々は「夏の終りのトラヴィアータ」というタイトルで新人賞に応募されたようです。
私は改題前の方が好きかなぁ。

主人公たちが私と同年代なわけで、こういう作品を沢山読むべきだと思いました。なぜならば、こうやって大人になっていくしかないからです。
今の時代は40代になっても、ワンピースとか鬼滅の刃とか進撃の巨人とかを読んでいてもバカにされないし、高校生が主人公のアニメを見たって別に良しとされている。だけれども人間としての幼稚さはそのあたりが原因なのではないかと考えた。
YOASOBIとか髭ダンとか聞いても良いのだが、40代ならばクラシックとか聞いて、茶道とかやるべきなのではなかろうと考えたりもした。
そうして私はちゃんとオジサンになる。格好良いオジサンになる。
それが求められているように思う。
そのためには伊吹有喜さんの作品を読み漁るべきなのかなぁと思っております。それか諸子百家とかね。

アラフォー男女にはたいへんオススメの作品だと思います。

以上

(28分)

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投稿者: 石黒わらじろう

京都の古い民家で暮らしている。 趣味はランニングとブログと盆踊りを含むフォークダンス。 別名義で書いた小説は映画の原作として採用された。 自分で建てた小屋にて暮らしていたことがある強靭な狂人。 地球にも自分にも健康な生活がしたい。

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