今日は読んだ本の話。
江國香織さんの「落下する夕方」を読了しました。

去年の今頃、というのは2021年の秋頃、失恋ダメージを受けていて大変だった。
心に穴が空いて、そこに吸い込まれて、闇から出られなくなるような、ぎゅぅぅ、という痛みを抱えながら生きていた。
夜の闇が怖くて寝れなかった。
お酒はたくさん呑んだ。
コロナで楽しいこともできず、苦しかった。

それでも振り返ってみれば、私にとって失恋は成長の機会になるようだ。空いた穴を塞ぐために、がむしゃらに動くからなぁ。
小説を書き始めたのも、古民家を借りてガサゴソやりだしたのも、失恋がそうさせたのかもしれない。

さて、「落下する夕方」も冒頭から失恋に追い込まれます。
30歳手前の女性が主人公。8年くらい付き合って、結婚同然に同棲していた相手から、「引っ越す」と別れを切り出される。
理由は?
好き人が出来たんだとか、、、

ガーン!

だけれども、3日に1回は電話で話す関係が続く。
さらに、その元カレが好意を寄せる女、華子が主人公の家に転がり込んで来る。
変な展開!

ミステリアスな華子との同棲生活が始まるのだが、とにかく元カレは近くにいるし、楽しかったあの頃を思い出しつつ、現実に向き合わないといけない。
失恋をし続けるような環境。
辛い!

ストーリー的にはミステリアスな華子が奇妙な行動をとって、話が展開していく小説です。

正直な感想としては、元カレが近くにいる点や華子と仲良くできる点が私には共感できず、
「なんでやねん」
と、思うことが多々ありました。

私はそこまで心が強くないので、主人公よりももっと落ち込んで、もっと心がグサグサやられちゃうんですよ。だから、主人公の環境には耐えられません。

とはいえ、別れた恋人を思い出してしまう心境は、私の記憶にも刺激を与え「ああ、楽しい日々があったなぁ」と、思わせる力があるのでした。

江國香織さんの文章は、東京のオシャレ感やトレンディな感じが漂ってきて、京都人の私としては「ちっ」となる時がたまにある。
東京への対抗意識です。
でも、その空気をまとう文章こそ上手さであり、個性なんだろうなぁ。

ちなみに、江國香織さんの「デューク」を読むと、何度でもうるうるしてしまいます。

私は失恋から1年経ちました。
付き合っていた頃の楽しく甘かった思い出を浮かべても、心がぎゅぅぅとすることはなくなった。
夜の公園を散歩したこととか、お気に入りのパン屋さんがあったこととか、彼女の部屋を合鍵で開けたこと、洗剤のいい香りがふわっと漂ったこと、小さなキッチンで晩ごはんを作ったこと、彼女が帰ってきた時の笑顔や仕草。
それらを思い出しても、ぎゅぅぅとならない。

恋愛期間も終わって、失恋期間も終わったと知る。
そんな今の日々は、少々つまらない……。

失恋した女性が読んでみると共感ポイントは多いかもしれません。
文章がトレンディでおすすめです。

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投稿者: 石黒わらじろう

京都の古い民家で暮らしている。 趣味はランニングとブログと盆踊りを含むフォークダンス。 別名義で書いた小説は映画の原作として採用された。 自分で建てた小屋にて暮らしていたことがある強靭な狂人。 地球にも自分にも健康な生活がしたい。

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