女性と二人きりになって、しばらくの時間を過ごしたのに、ロマンティックな感じにならなくて、なんか男として不甲斐ない気持ちになるのは、なんなんだろうな。
友情と解釈しても良いのだが、それにしては、ざっくばらんさがなくて、拙者の態度は女性に対するそれであり、ぎこちない。

発端は、女性から「良ければ一緒にランニングしてほしい」という提案をもらったこと。もちろんオッケーなので、そういう返事をする。
日程調整すると、2月5日になった。

拙者に気があるのかい?
などと慮ったりするけれど、こんなのは妄想の類らしく、拙者に対する好意がなさそうなのは、メッセージの内容や頻度でハッキリすることだ。
だから、シンプルにシンプルに、一緒に走ってくれる相手をお求めのようだし、そのお求めに応えるのは拙者であるべきだ。
拙者の側も一緒に走ってくれる相手を求めており、良い景色を見た時とか、気になる物があった時に、「いいねー」とか「何だこれは」と言いたい。いつもは独りで走っているので、心のなかで呟き、あるいは独り言を呟き、寒々しいので、願ったり叶ったりのWin-Winなのだ。
さらには走る場所も万博記念公園をチョイスして、ここは大阪ランナーの聖地的な存在らしく、一度は走ってみたかった。

幸運にも上手く晴れて、京都からバイクで1時間ほど走り、彼女と待ち合わせ。先方は遅延が発生していたらしく10分遅れでやってきた。前より髪色が派手になっていた。

早速ランニングをスタートする。
多くのランナーは外周を走るようだが、拙者たちは遠方から来ているので、入園料を支払い園内を走ることにした。
外周が5kmと情報を得ていたので、できるだけ長く走れるようと大回りで周る。

お喋りしながら走るペースは1kmあたり8分で、普段は6分台で走っている拙者には遅いかと思いきや、前日の疲労が残っているのでちょうどよいペース。
しかし会話はあまり弾まなくて、拙者が一方的に喋り、彼女はしんどそうに相槌を打つ。
「○○さんは二十代やっけ? エキスポランドの存在を知らんよね?」
「はい」
いや、これはトーク内容がつまんないのではなく、走りながら喋るのはそこそこしんどいってことだ。登山で口数が少なくなるのと同じ。

木々の間を抜けるのも好きだし、モニュメントも面白いけれど、芝生の広場がずーんと広大なことに非日常を感じた。規模の割には人が少なくて、人が小豆サイズに見えるほど遠くまで見渡せて、傍らには一緒に走る人がいて、わーっと手を広げたくなったし、実際にそうした。
楽しかった。

一緒に走る人、と表現せざる負えないは、友達と表現するのもおこがましい距離感だから。
友達以上恋人未満という、微妙な距離感を表現する異性関係の言葉があるが、同じように表現すると、恋人以下友達未満知人以上、くらいの感じだな。
「一度会ったら友達で、毎日会ったらきょうだいだ」という名言が頭の中にあるのだが、これは明確に否定したい。全然違うぞと。

太陽の塔を写真に収めたり、小さく咲いた梅を見たりした。
その後も大回りで走っていると、元の場所にたどり着いた。
園内なのに意外にも8kmも走れた。
「こんなに走れると思ってませんでしたー」と、友達未満の君は言った。
「よく頑張ったね」と、言ったはず。

その後、ランチもご一緒したけれど、それは本当に空腹を満たす、という感じだったし、ロマンティック要素ゼロ。
拙者の心にはスカスカの穴が空いているような、なんにも無さ。
どーなってるのこの島はドーナッツ。

こうしてロマンスは起こらず、太陽の塔の思い出が残り、友情が育まれ、次回からは友達と表現することにしよう。
知人以上から友達に昇格したことにしよう。
そしてこの際だから、ランニング友達をたくさん増やすことにしよう。
これでハッピーエンドだ。

拙者はエキスポシティとかに行っても、あるいはUSJとかに行っても、さほど楽しめないので、ランニングしてビール飲んで美味しいご飯を食べるのがいい。
「一度走ったら友達で、毎日走ったら義兄弟だ」
という名言を採用して、今後も楽しめるように頑張る。

以上。

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投稿者: 石黒わらじろう

京都の古い民家で暮らしている。 趣味はランニングとブログと盆踊りを含むフォークダンス。 別名義で書いた小説は映画の原作として採用された。 自分で建てた小屋にて暮らしていたことがある強靭な狂人。 地球にも自分にも健康な生活がしたい。

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