自分が遊び慣れないオジサンだなぁと思うと、切なくなる。
いや、アウトドアフィールドなら遊びまくったけれど、シティの遊び、あるいは男女の遊びは初々しいことこの上ない。
高校生くらいの発達レベルで社交性を発揮せねばならぬず、振る舞い方が分からずにタジタジ。でも外見はオジサンで、存在自体がキツイ。
今日もまた、情けない話を書かねばならぬ。
○
京都の某所で美味しくビールを飲んでいたところ、
「近くでイベントをやっているので一緒に行きませんか?」
と、その日初めて会った方にお誘いいただいた。
内心では、ちょっと面倒くさいぞ、とたじろいだ。その場でも楽しく過ごせていたからだ。
しかし、小説であればこういうことで異世界の扉が開かれて、冒険が始まるし、ほどほどに酔ってて気持ちも大きくなっていたし、ノコノコと出かける。
火照った体で静かな夜の街を歩き、大通りに出て、店内からもれる光に誘われると、そこはほどよい異世界だった。
飲食店主催のパーティーで、店内はDJブースが設けられ、人がワイワイ集まっている。知らぬ人と肩をすり合わせないと移動できないレベルで、その密度に一旦は圧倒された。3年間コロナ禍だったので久しぶりである。
群れの中に入った拙者の視線は、どうしても女性をサーチするように動くようで、何人かの麗しい女性を捉え、だけどいきなりは声をかけられず、どうすればその場に馴染めるのかを必死で考える。
そのパーティーには独特の作法があり、それは人と喋らねばならぬ強制力があり、最初の一歩はなかなかハードルが高い。
ひとまず年長者っぽいオジサンに声をかけ、振る舞い方のお手本を示してもらおうと思った。
しかしそのお方は、
「いや、女の子に声かけるべきだろ」
と、おっしゃる。
ごもっともである。
お陰さまで、年上の女性や誘ってくれた方のフォローが入り、とりあえずは場とジョイントする突破口が開けた。
パーティーでひとりポツンと取り残されるのは、侘しいからなぁ。なぜその場所にいるのか分からなくなって、周りはガヤガヤしてるのに、1人だけ無常観に浸って、悟りを開きそうになるからなぁ。
その侘しさを埋めるために無理して誰かと喋るのも、また虚しい。
パーティーは苦手である。
などと、思っておると、ふと視線がぶつかる女性がいて、その方は女性の二人連れで、若すぎることもなく、これは! いける!
たぶん「カンパーイ」みたいな感じで喋りかけ、「このイベントにはよく来るんですか?」などと会話をつなぎ、そこからは自然な会話が発生してたはず。
「体を動かすのは好きですー」
「重低音で体を揺らすのが好きですー」
「ヨガはやってますー」
などの言葉に、拙者はランニングやサルサダンスや盆踊りトークで応酬した。久々に腰をくねくねして見せたら、喜んでおられた。
他の方ともお喋りしたが、おおむねこの方とのトークが最も安心感があり、長く時間を過ごし、そのうちに幻想が頭をかすめるようになる。
この日初めて会った異性なのに距離が近い。
拙者の耳に寄せた小さな口から流れる声が心地よかったり、ふと顔が近すぎたり、華奢な手や肩や腰に触れたり、それがベルベットの感触だったり、なにかタケノコがむくむくと育つような心境。
キリッとした眼と薄い唇に髪はボブ。とても良識の有りそうな見目なのに、時折甘えるような仕草、女の色香が出ておる。
こうしてブログを書いている拙者であれば「落ち着け落ち着け、いつもの自分のままでいろ」とアドバイスするのだが、酒飲んでぽわぽわモードに入っておったやつは、デレデレとした醜態を晒していたのであろうな。
修行が足りんぞ、修行が。
聞けば人妻で、30代で、お子もおられるそうで、拙者は波乱など期待しておらぬのだが、あまりにふわふわとした酔気を出しておられたので、誰かがそばに居た方が良いよなぁという気持ちだった。
「家は近いんですかー?」
と聞かれた言葉に、それ以上の意味を推し量ったり。
でも最終的には、ひつこい、と思われたようだ。
彼女は隣の男性に積極的にお喋りを持ちかけ、拙者は独り残される。
ポツン。
甘え方も巧く、逃げ方も巧い。
遊び慣れておられる。あっぱれなお人じゃ。
そんなこんなで終宴の時間が近づき、まだ賑わいの残る店内を後にして、小雨の道を駅まで歩いた。
何も失ってはおらぬので大丈夫だけど、遊び慣れてないオジサンだなぁと実感してしまい、自信は失ったところだ。
ガッデム!
あーあ、ちゃんとした大人になりたかったなー。
○
パーティーは苦手だ。
だが、懲りずに鼻の下を伸ばしに行こう。
生き恥さらし、人間らしく、ぬけぬけと生きるぞー。
本当はひつこくなんてないぞー。
以上。
募集中のイベントはありません